オーディションでせらと初めて会ったあきら。
せらの中に何かを感じ取ったあきらは、どこともなく彼女の事が気になっていた。
そんな折にとある仕事があきらに舞い込んだのであった。
「…この扉の向こうに、あたしの仕事相手が居るのよね。」
オーディションの合格通知が来たものの、2人合格のオーディションで相手が語られなかったのをすごく不思議に、そして不安に感じた。
「今まで相方の居た仕事で相手が伝えられなかった事はなかったのに、珍しいわね。」
緊張を隠せずに扉の前に立つあきら。意を決したように扉を叩く。
「失礼します、木下あきらです。」
「あ、あきらちゃん?!」
「えっ?」
扉を開けてすぐの声に驚くあたし。それもそのはず、オーディションで少し話をした女の子が目の前に居たわけだから。
「もう1人の合格者ってSERAだったの?」
「もう1人の合格者ってあきらちゃんだったんだ~。」
お互いに驚く2人。このままだと硬直しそうだったため、編集長が声を出す。
「お互いを知っているのなら話は早そうだな。とりあえず木下あきら君、かけてくれ。」
「あ…、は、はい!」
とりあえず隣り合って座る2人。編集長が今度の撮影の話を始める。
「で、今度2人に着てもらうのはティーンズ向けの秋冬物の新作なのだよ。」
「え、秋冬物?まだ梅雨に入ったばかりですよ?」
不思議がるSERAにあたしがツッコミを入れる。
「SERA…、この業界では3か月早いとか当たり前なのよ。そうじゃないと先取りできないでしょ?」
「あ、そっか…。ホントボクって無知ですね。」
てははと笑うSERA。ホントこの業界の事何も知らないようだった。
しかし、ずっと気になるのはSERAからはあたしと同じ感じがするという点。可能性は0ではないけど、あたしが全く知らなかったというところがとても気になる…
「まったく…、SERAはモデル業界知らなさすぎだわね。」
「社長に誘われるまではこの業界とは無縁でしたからね。」
「…、それでよくモデルになる気になれたわね。」
「社長の熱意に押された感じです、正直なところ。それに、自分を試してみたくなりましたしね。」
「はいはい、お話の最中悪いけど打ち合わせに入るのでいいかな?」
「あ、ごめんなさい。」
…、話を聞けば聞くほど不思議な子なのが分かる。
『もやもやしたものはあるけど、今は仕事に集中しなきゃ。』
話によると、2週間後の日曜日に撮影をするという事だった。
「期末テスト直前の日曜ですし、特に問題ないと思います。」
「ボクの方も大丈夫ですね。」
「それじゃ、撮影日時はこれでいいかな?」
「はい。」
「今日は遅いから、採寸とか明日にするかね?衣装のデザインは出来てはいるが、
モデルに合わせたのを作るには少々時間がかかるからね。」
「それでしたら今からでも構いませんよ。SERAは?」
「ボクも構いませんよ。」
「そうかね。それじゃ担当を呼んで採寸するか。」
それからはしばらく、衣装の細かい変更や当日スケジュールなど、細かい事をほぼ毎日のようにつめていった。
―――そして、撮影当日を迎えた
―――第5話は続く