「み」から始まる冒険者

元「トリックスターのプレイ記」。現在は主に自作漫画の進捗報告記。Comicoに「ひみつのなぎさ」を投稿中!

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現在、comicoにてベストチャレンジとして「ひみつのなぎさ」を投稿中
(c)未羊

2015.10.27 「ひみつのなぎさ」第5話投稿
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せらism☆第9話「予兆☆」その2

前回までのあらすじ

 本当の歌手デビューに向けて特訓を積むせら。
 久々のあきらとの仕事の時もその事で盛り上がるのであった。
 一方、あきらの前には謎の男が現れたのだった…。

 
 
あきらと仕事をしてから数日たったある日の事…。
いつものように仕事のために事務所を訪れたせら。
社長が満面の笑みで出迎えてきた。
「SERA、朗報よ!ついに曲ができたらしいわ。」
「もうできたんですか!?5日くらいしか経ってない気がするんですけど…」
「インスピレーションさえ来れば数時間であげる人も居るわ。時間なんて関係ないのよ。
 そういうわけで、今日はこれから若林さんのスタジオに行くわよ。」
社長はそう言うと、ボクを強引に連れて事務所を後にした。

移動中は新曲がどんなものかわくわくしながら、特に話す事もなかったものの、無言のにぎやかさがただよっていた。それくらい新曲を楽しみにしているのだ。
夏休みの日中という事もあって、道路はあまり渋滞していなかった。そのせいも思ったより早く着いてしまった。
「ここが若林さんのスタジオですか?」
ボクはポツリと質問してみた。
「えぇ、そうよ。こじんまりとしてるけど設備面は充実してるわ。
 実際、このスタジオで録音した歌手も居るくらいよ。」
社長はそう答えてボクを連れてスタジオに入って行った。

  ――ぴんぽーん♪

社長はインターホンを押す。
「はい、どちら様でしょう?」
インターホンから若林さんの声がする。
「おはようございます、若林さん。宝木です。」
「おぉ、早速来てくれたんだね、入っても構わないよ。」
「では、失礼します。」

中に入ってボクは驚いた。スタジオと聞いていたので、もうちょっと機器類があるかと思ったけど、書斎のような雰囲気だったので想像と違っていた。
「ふふふ、事務室みたいな感じだろう?音響機器とかは別の部屋に置いてあるんだ。
 とりあえず、こっちに来てくれないか?」
若林さんに誘われるままにボクたち2人は別室に移動した。そこには大きなピアノが置いてあった。
「え?もしかして…」
思わず口にしたボクの言葉に若林さんが反応する。
「そうだ、今からこれで新曲を弾く。とりあえず聞いてみてくれ。」
若林さんはそう言うと楽譜もなしに曲を奏で始めた。
演奏が始まるとボクたちはその素晴らしさにただ黙りこむだけだった。これが自分の歌う事になる曲だというのに聞き惚れている。なんだかすごすぎて、ボクが歌うにはもったいない気がした。

「どうだったかな?」
弾き終わった若林さんがこっちを見た。ボクは我に返って答える。
「すごいの一言に尽きます…。これをボクが歌うんですよね?」
「そうだ。最もピアノ曲ではないけどね。実際はうちの抱えるバンドに演奏してもらう。
 発表は今日から一週間後の8月20日だ。3日後にはうちで録音してもらうが、いいかな?」
「はい!ボク頑張ります。」
「いい返事だ。これは歌詞とデモテープだ。覚えてきてくれ。
 そうそう、この曲はすべて君を見た時のインスピで作らせてもらった。
 曲のタイトルもそれに沿っている。『秘めた思い』、君にはぴったりだと思うが?」
ボクは、曲名を言われた時、思わずドキッとしてしまった。それもそのはずだ。ボクは本来男なのだから。もしかして見抜かれてる?と思い、思わず質問してしまった。
「…、若林さんがそのタイトルのイメージで曲を作ったのはなぜです?」
ボクの表情を見て、若林さんは何かを悟ったように答える。
「君には、女の子というには違った物を感じたのでね。…、私の直感はなかなか当たるんだよ?
 こんな事を聞いてどうするつもりだったのかな?」
「いえ、気になっただけです。特に意味は…」
「ふむ、それならいいのだが。ともかく3日後には収録なので覚えておいてくれ。
 君ならこの曲を歌いこなしてくれると思っている。すぐは無理かもしれないが、いつかは…ね。」
社長はボクと若林さんのやり取りを黙ってみていた。
「…、それじゃSERA。」
「はい。」
「若林さん、どうもありがとうございました。今日のところはこれで失礼します。」
「うむ。3日後を楽しみにしているよ。」
そう話すと、ボクたちは若林さんのスタジオを後にした。社長は何か解せないような顔をしていたものの、結局ボクを家に届けるまであのやり取りには触れなかったのだった。

――こうして、2人の何かが動き始めたのだった。


   ―――10話に続く

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