「み」から始まる冒険者

元「トリックスターのプレイ記」。現在は主に自作漫画の進捗報告記。Comicoに「ひみつのなぎさ」を投稿中!

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現在、comicoにてベストチャレンジとして「ひみつのなぎさ」を投稿中
(c)未羊

2015.10.27 「ひみつのなぎさ」第5話投稿
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せらism☆第10話「世界が変わる時」

前回までのあらすじ

 せらがモデルを始めてから約3ヶ月。せらの歌手デビューが決まった。
 一方でせらのパートナーであるあきらの前には謎の男が現れた。
 こうして、せらとあきらに転機が訪れた…。

 
 
いよいよ、ボクの歌手デビュー曲、『秘めた想い』の発表日がやってきた。
夏休みという事もあって、モデルをしながら歌とダンスの練習もみっちりやってきた。今日は発表日なのですごく緊張している。せっかく練習してきたのに、ここでミスってしまってしまったらすべてが無駄になる気がした。
「せらちゃん、だいぶ緊張しているようだね。」
若林さんが声をかけてきた。そう、ボクは今発表会場の控室に居る。歌う事になるなんて思ってなかったのでモデルの時以上の緊張に襲われていた。衣装も予想よりフリフリでモデルの時に着る事のない衣装でさらに恥ずかしかった。
「それはそうですよ~。こんな大勢の前で歌うなんて初めてですし…、それにこの格好も…」
「ほほぉ、あの時はかなり居たと思うんだが?それでも恥ずかしいと言うのかな?」
子どもをあやす時の事を突かれ、言葉に詰まる。
「あ、あの時は…」
「はっはっはっ!あの時は子どものためだったからね、分からんでもないさ。
 ともかく、そろそろ時間だ。覚悟を決めた方がいいと思う。」
「あ、そうですね。頑張ります。」
もう時間のために後戻りもできない。もう覚悟を決めてステージに立つしかない。そう決めるとボクは楽屋を後にした。

会場脇に移動してボクは驚いた。無名の歌手デビューというのに若林バリューなのか報道陣がすごい数になっていた。
怖いと思う一方でなぜか不思議な高揚感も感じていた。時間も近づいてきたボクは覚悟を決めた。
「うむ、いい顔だ。それじゃ時間だし、出るとしよう。」
「はい。」
ボクたちは会見場の席まで移動のために歩み出た。裾から姿が出た瞬間に目がくらむほどのフラッシュがたかれた。
「臆する事はない。普段通りにやればいい。」
小声で若林さんが言う。なるべくそう心がけるつもりだ。
ボクたちは席に着いた。そろそろ会見が始まる。

…、しばらくの沈黙の後、若林さんが口を開く。
「えー、みなさん。本日お集まりいただき、まことにありがとうございます。
 今回はこの私が新たにプロデュースする歌手のお披露目会見であります。
 皆さんの中にはもしかしたらご存知の方もいらっしゃるでしょう。
 では、紹介します。新人モデルでもある『SERA』です。」
若林さんがそう言うと、会場はざわめいた。ボクは打ち合わせ通りに自己紹介を始める。
「み、みなさんはじめまして。今ご紹介にあずかりました『SERA』です。
 今回、若林さんのプロデュースで歌手デビューする事になりました。よろしくお願いします。」
少々震える感じはしたものの、なんとか言いきった。
「今回、私がこの子をプロデュースする事に決めたのは彼女の『歌声』です。
 以前、偶然歌う彼女に出会いまして、その時の声に聞き入ってしまいましてね。
 この時、私の中にこう何とも言えない物が走りまして、今回のプロデュースに至ったわけです。
 論より証拠、まずは彼女に歌ってもらえれば分かるかと思います。」
若林さんがそう言うのを合図に、ボクは歌う準備を始めた。
「それでは聴いてもらいましょう。SERAのデビュー曲『秘めた想い』。」
曲が流れ出す。ボクは練習を思い出してミスをしないように歌った。
歌の最中静まり返る会場。響き渡るボクの歌声。会場全体が歌に聞き入っている。

歌い終わったボクは、やりきった感じの表情を浮かべながら、深々と頭を下げた。なんとかミスもなく歌いきれたからだ。
どこからともなく拍手が起こり、それに戸惑いながらもボクはゆっくり席に戻った。
ボクが席に着くと同時に、若林さんが口を開く。
「それでは、ここから多少なりと質問の時間を設けます。
 ですが、彼女はまだ中学生。それだけは忘れないで下さい。」
そこからしばらくの質問タイムだったが、さすがに若林さんが釘を刺したのが効いたのか、そこそこたわいのない質問が多かった。
それでも、本来は男であるボクには答えづらい物もあった。それもなんとか持ち前の機転でかわしつつ、質問タイムを乗り越えられた。記者たちは質問し足りない表情をしていたが、モデルとしての仕事の時間が迫っていたため、若林さんが制止するような感じで終わらせたのである。

「SERAちゃん、お疲れさま。」
「お疲れさまです、若林さん。すみません、最後の質問タイム、無理やり終わらせていただいて…」
「いや、いいんだ。こうでもしないと止まる事を知らない彼らを暴走させてしまうからね。
 それにだ、今日はモデルとしての仕事があると聞いていたからね。」
「はい、ありがとうございます。」
控室に戻ったボクたちはゆっくり休んでいた。でも、ボクはすぐにモデルの仕事が控えていたのでそんなにはゆっくりできなかった。
折角歌手としての初仕事を終えたのだからゆっくりしていたかったけど、仕事は仕事なので仕方がなかった。
「それではそろそろモデルの仕事の方へ行きます。お疲れさまでした。」
「うむ。これからはますます忙しくなるだろうが、負けないで頑張ってほしい。」
「はい。」
「移動はどうするのかな?よければ送ろう。」
「いえ、社長が来てくれてますのでそれで移動します。では、失礼します。」
「そうか、それなら仕方ない。お疲れさま。」
ボクは若林さんと別れ、モデルへの仕事に向かった。

しかし、この歌手デビューでボクを取り巻く環境が一変したのは言うまでもなかった。
まさかあんな事になるなんて、ボクには全く予想はできなかったのであった…


   ―――第11話に続く

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